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子守唄

雨よ落ちるがいい やわらかい土のうえに

髪よなびくがいい 春風のなかに

髪よ 風車よ 雨よ 水すましよ

おまえたちたかだか 雨傘のなかの心音にしかすぎないとも

光りのなかにみちびき 風のなかにそよがせ

途切れた歌を 繰り返しくりかえし

歌い聞かせば 想起のなかから

ほほえむ顔をのぞかせるだろう

道はたで拾った透明な壜の蓋が

草むらで見つけた 一羽の小鳥の屍骸が

土に覆われるまでのほんのひととき

しずかにおまえに語りかける

雨傘のなかも辛かろうに 冷たかろうにと

でもお聞き 窓から聞こえてくるのは子守唄

雨よ この子を濡らさないで 風よ髪を濡らさないでと

でも落ちておいで 吹いておゆきと

                 imuruta

これは ぼくの第二詩集<あすか路>です

 

​ 宮川淳の<鏡・空間・イマージュ>や<紙片と眼差とのあいだに>や そして豊崎光一の<余白とその余白 または幹のない接木> に読みふけっていたころの作品です。集中<七つの子>と<走る男>には土方巽の写真集<鎌鼬>から画像を引用しています。最後の<魔法瓶>には、耳に選ばれた作家、三木富雄の人の身長ほどもある巨大な耳の作品を引用しています。

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