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​糸車

小窓を通って 風はしずかにこの部屋に入り

窓辺の花鉢の周りをひとめぐりすると

うす暗い床に降りて もう幾十年も

そこに眠っていた古い糸車をみつけだす

もの語りのなかに閉じ込められていたそれは

ちいさなため息をひとつ付き かたんといちど揺れる

もういちど廻れ糸車 まわれ夢

その飛沫で ありし日の記憶を解き放て

いましも どんぐり帽子の妖精が腕木をまわすと

風にあおられた花篭からは 次ぎつぎと花びらがこぼれ出す

しだいに回転をあげる糸車 糸が足りない糸が

すると妖精が ねむり姫のたまご形の爪にその先を結ぶ

指さきから巻き取られてゆく 糸また糸

その時きみは 逆さまに吊り下げられて喘ぐ繭

                          imuruta

ぼくの名前は不思議人<imuruta>ある日のこと道端で一頭の象と知り合いになりました。象はいつも陰になり日向になり、このあともぼくといっしょにどこまでも旅をつづけてくれるでしょう。ところでここに始まる不思議な世界は ぼくをどこに連れてゆくのでしょうか。これはとりあえず、ぼくの出発点 第一詩集です。

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