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シャボン玉

蔦の絡まる図書室で 貸出簿をめくってみると

<ビーバーの冒険>の次が<五次元世界のぼうけん>

その次が<八十日間世界一周>で 次が<冬眠二百年>

きのうはきのうで 一日中花壇の日時計の設計図を調べていたが

今日は朝から本と首っ引きで 指を使っての算術に余念がない

学校帰りに その子の家に寄ると

幾つもいくつもの日付の書いた戸棚に

まるで標本のようなシャボン玉がしまわれている

ニッポニア クロノメーター デュオデシマル

これが三年前の橙々 これが七年前の緑 これが十一年前の青

でもどうしても十二年目あたりで壊れてしまうんだと その子が言う

三時になると決まって お母さんの出してくれたハチミツを

ぼくらは双子の熊のように 大事そうに舐めながら

年数によってびみょうに変わる色合いに いつまでもみとれていた

                     imuruta

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