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​先生

その日も朝から良く晴れて もう早起きの雲雀たちが

空高く 生き生きと春の歌をうたっていた

そろそろ菜の花が終わりを告げると

あちこちの田んぼでは きっとれんげ草が競って咲き出した

急いで朝ごはんを済ませると あかい靴を履いて

先生が待っている 村はずれの納屋を目指す

先生は 器用に鼻で床に五線を引くと

いつも鼻歌をうたいながら うれしそうに目くばせした

鼻で小刻みにリズムを取りながら

拍子とアクセントを教えてくれたのも

トロンボーンのように鼻を伸ばしたり縮めたりしながら

音階を教えてくれたのも つい昨日のことのようだ

<おはなしゆびさん>や<ぞうさんくものす>も教えてくれたが

ときどき 心配そうに右手の薬指を見ながら

まるで異国の お経のような呪文を唱えると

いきなり鼻の下を伸ばして 腋の下をくすぐってきたりもした

                   imuruta

ぼくの名前は不思議人<imuruta>ある日のこと道端で一頭の象と知り合いになりました。象はいつも陰になり日向になり、このあともぼくといっしょにどこまでも旅をつづけてくれるでしょう。ところでここに始まる不思議な世界は ぼくをどこに連れてゆくのでしょうか。これはとりあえず、ぼくの出発点 第一詩集です。

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