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​砂浜

砂浜にねて うおのように乾いてゆく

髪の雫がこめかみを滑り落ちて耳に入る

水辺では ひねもす砂は波とたわむれ

水平線には傍観者のような雲が立つ

子どもの歓声がひどく間遠く感じられ

瞳を動かすごとに目蓋の裏に幻暈がのこる

ひとを呼ぼうとしても声の出ない夢の中でのように

背中の下で砂が動き わずかづつ沈み始める

やがて日は中空に居をさだめ濡れる粘液は乾き

打ち上げられたものたちの渇きはいやはて

水着の腰はとほうもなく重く感じられる

砂の上にわずかばかり残されたうおの耳

ほほえみを湛え かなたの雲に見とれていた桜貝

それらもやがて風化しつつ この白い砂の下に沈むだろう

                    imuruta

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