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散歩
見上げるほどにますます大きかった
境内の樫の木は
ここからはすでに見えないのに
あちらこちらにどんぐりを落としていた
きみは熱心に内腿を隠しながら
ひとりで その木の実を拾っていた
ときに 乳母車を覗き込むように
ぼくはきみの帽子の下を覗きこんだ
いったい幾つ拾い集めたのか
それは薄布のハンカチのなかで
きっとまだ濡れてくりくりしていた
だが見渡すほどに記憶はかげり
きみの布のなかで種子はむずかり
樫の木は ますます遠いものになる
imuruta
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