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ひとつ飛ぶと

ひとつ飛ぶと ふたつ飛ぶ

ひとつ飛ぶと ふたつ飛ぶ

ふたつ飛ぶと 上になり下になり

おりからの春の微風のなかを

じつにせつに じつにかろやかに飛ぶ

ひとつ進むと ふたつ進む

ひとつ止まると ふたつ止まる

どんなからくりになっているのか

リー・イン・カーネーション

ひとつ上がると ふたつ上がる

ひとつ目に遅れまいと ふたつ目が必ず後を追う

見下ろせば いちめんの菜の花畑

ふと気付くと ぼくらその上を舞う

かけがえのない二羽の蝶だった

ひとつ飛ぶと ふたつ飛ぶ

ひとつ飛ぶと ふたつ飛ぶ

ふたつ飛ぶと いつも見果てぬ夢の中

それは何か天球の遊戯だったか

それとも あらかじめ示し合わせた上での約束だったか

広い ひろい地球の上のこんな小さな菜の花畑で

まるでぐうぜんをよそおってぼくらが出会うとは

ひとつ飛ぶと ふたつ飛ぶ

いちど飛ぶと もう二度と

この飛びの感覚を忘れられなくなる

ひとつ飛ぶと ふたつ飛ぶ

ふたつ飛ぶと どうあってもここで出会う

時空の不思議 夢の不可思議

君とぼくは 今回どんな約束を果たそうと

この黄色いせつない波の上にきた

ひとつ飛ぶと ふたつ飛ぶ

ひとつ飛ぶと 必ずあとを追ってめぐるぼくら

ねえ もう何回目なのだろう

めぐる季節 めぐる春

前の転生の時もこうだったろうか

ひとつ飛ぶと ひとつ目の中をふたつ目が飛ぶ

ふたつ飛ぶと ふたつ目の中をひとつ目が飛ぶ

ああ 君が欲しくて 君が欲しくて 君が欲しくて

どれほど君のまわりを飛んだだろう

君に会いたくて 君に会いたくて 君に会いたくて

なんど この菜の花の上をさまよっただろう

ただ あるかなきかの絆を求めて

ただ たがいの心だけをたよりにぼくらは飛ぶ

君が恋しくて 君が恋しくて 君が恋しくて

ぼくはどれほど 君の中を飛んだだろう

君に会いたくて 君に会いたくて 君に会いたくて

どれほど君は ぼくの中を飛んだ

ひとつ飛ぶと ふたつ飛ぶ

ひとつ飛ぶと ふたつ飛ぶ

君が飛ぶから ぼくも飛ぶ

ぼくが飛ぶから 君も飛ぶ

めぐる天球に寄せる花波は

気が遠くなるほど どこまでも広がる黄色い波は

もしぼくらに二本の腕があれば

とうに抱き合って離れないものを

どうしたものかこの背中の二まいの羽根は

ひとつ飛ぶと ふたつ飛ぶ

ふたつ飛ぶと だがそこには

もうかけがえのない未来が始まっている

                     imuruta

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