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デジャ・ヴュ

ウェイヴかと思った デジャヴュかと

足かと思った ハンズかと

もう春だというのに 何という錯誤

狐になって 唇を盗む夢を見ていたのか

胡蝶になって 暗がりに潜んでいる夢を見た

春かと思った もう桃の花が咲いていた

じつは 象とふたりでながい旅をしていた

街路樹かと思った 概念かと

薬局かと思った 接吻かと

ぼくが象に脱脂綿をひと包み渡すと

お返しに 象はひと握りの楽譜をくれた

それからぼくらはふたっつみっつ内緒話をした

まだ書くのかと象が聞いたところで夢からさめた

じつに春だった 庭に象の花が咲いていた

ウェイヴかと思った デジャヴュかと

素足かと思った 掌かと

もう春だというのに 何と言う錯覚

仔犬に化けて 無邪気と戯れていたのか

竜になって 藪に潜んでいる夢をみた

春かと思った 獏に夢を喰われかけていた

じつは象から 途方もない秘密を明かされていた

恒星界かと思った 山頂かと

文書局かと思った 詩篇かと

ぼくが象にみどりごを包んで渡すと

お返しに象は錦織の天球をくれた

それからぼくらは目と目で合図し合った

まだ書くのかと象が聞いたところで夢からさめた

じつに春だった 神の庭に詩の花が咲いていた

                 imuruta

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