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​しるし

もう 想い出させないで下さい 歌を

忘れて下さい いちまいの葉のことなど

風吹き 風さわぎ 茂みがいやいやを繰り返す

どうかもう

時の歌など歌わないで下さい

存在のかなしい歌など

散りながら 散り落ちながら

いちまいの葉が 透明な叫びをあげる

千の死も ひとつの死もいまは同じ

音楽が鳴っている 心のいちばん深いところで

水が揺れている 遠いむかしから

ひとときも ひとときも果てたことのない波が

いまはひかりが

光が ただたゆたっている

ここにあったことだけですでに充分だと

もう泣かないで下さい もうみつめないで

わたしはいつの時もあなたのもの

あなたはいつの時もわたしのもの

ちょうど 詩とあなたのように

そしてさいごにどうか 心あるなら

もう想い出そうとしても 想い出しようのない

あなたのしるしを指で切って下さい

             imuruta

ぼくの名は 不思議人 < imuruta > ここに紹介しているのは、ぼくの 第3詩集にあたるものです。 つぎに紹介するはずの第4詩集<月下の道>とペアを組んで、ひとつの夢の世界を構成しています。集中、ぼくのお気に入りは<ユン>です。彼女はぼくの夢の中を文字通り難なくすり抜けて、おそらく次の<月下の道>にも登場してくれることでしょう。

© 2016   produced by imuruta with WIX.com

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