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その朝
その朝 手を焼きたいと思った
その朝べつに 体に熱があった分けではないが
朝起きると 指の一つひとつの節が妙に熱く
それはなにか 焦がれ果てたすえの燠火のような
遣り場のない目 置き場のない手紙だった
節のひとつを鼻に近付けてみると
ものの焦げたような ただキナ臭い匂いがした
痛みは午後もずっと続き
何かものを握っていなければ
分けもなく力を込めていなければ
手が崩壊してしまいそうな
そんな気持ちがしていた
じっさい陽に透かしてみると 手は燃えていた
夜になって 部屋の明かりを落とすと
どうしようもなく赤い炎が立ち
どうすることも出来ず
ただひとり 火にみとれさえしていた
imuruta
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