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風の男たち

鳩がさわぐ 花がさわぐ やがて風が来る

髪が煽られる 裾が乱れる まもなく発たねば

昨夜遅くまで森で焚き火をしていた男たちは

火のはぜる音が未明までしていた

火あとから一条立ちのぼる煙りもやがて風に消される

風がさわぐ 草がさわぐ やがて雨が来る

衣が煽られる 髪が引かれる まもなく発たねば

昨夜遅くまで森を徘徊していた男たちは

ひそひそと語る声が未明までしていた

話し声のあとに残る沈黙も やがて光に消される

風の道とは 風だけが知る時間とは

見上げる枝が奇妙な図形を描いているのは

あの男たちは何を話していたのだろう 風の男たち

風のあわいに 道を追ってゆくこと

風は火あと 鳩は道 そして枝は煙りと

葉がさわぐ 枝がさわぐ やがて道が来る

耳がさわぐ 胸がさわぐ 今に発たねば

明日遅くまで旅をするぼくらは

約束しあう声が耳の奥でこだましていた

いずれ いずれ発たねば詩をあとに

                imuruta

ぼくの名は 不思議人 < imuruta > ここに紹介しているのは、ぼくの 第3詩集にあたるものです。 つぎに紹介するはずの第4詩集<月下の道>とペアを組んで、ひとつの夢の世界を構成しています。集中、ぼくのお気に入りは<ユン>です。彼女はぼくの夢の中を文字通り難なくすり抜けて、おそらく次の<月下の道>にも登場してくれることでしょう。

© 2016   produced by imuruta with WIX.com

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