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​楓よ楓

そもそもいのちがそうであるように

秋は稔りと 絶え間ない喪失の季節

楓よ楓 その仔狐の赤い手袋を

ポプラよポプラ その金色の葉を惜しげもなく降らせ

トネリコよトネリコ その空を仰ぐ姿は

やがて秋雨を待って そのながい髪を濡らさんがためか

ユリノキよユリノキ その立ち姿池の淵にすずしく

きみはどんな深思の祈りを天に捧ぐ

今しも風にさらわれた一枚の葉が

地上に舞い落ちるまでのその数瞬

楓 ポプラ トネリコ 楓 ポプラ トネリコと囁きかわすが

​それはまるで風と葉の 風と葉の 風と葉のかけがえのない愛の呪文にも聞こえる

あかいあかい一枚の葉を 楓と呼び

金色にこんじきにきらめく葉を ポプラと呼び

その一つひとつの葉を 何回もなんかいも記憶し

こうして秋のくるたびに呟きかわすぼくら かんぜんに無名の恋人たち

                       imuruta

ぼくの名は 不思議人 < imuruta > ここに紹介しているのは、ぼくの 第3詩集にあたるものです。 つぎに紹介するはずの第4詩集<月下の道>とペアを組んで、ひとつの夢の世界を構成しています。集中、ぼくのお気に入りは<ユン>です。彼女はぼくの夢の中を文字通り難なくすり抜けて、おそらく次の<月下の道>にも登場してくれることでしょう。

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