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夏草

夏草のあいだに ポクッと出た仔狐の顔

化けそこねたのか

三角のはずの顔がまるい

どこでいたずらしてきたのか

さっき鼻先についた泥が

いまにも乾きはじめて

ちょっとこそばゆい

風立ちぬ

見渡すかぎり草原はその彼方まで青く

風は 青のすみずみまで波立てて行く

風は 風はどんな匂いを君に届けた

そして君は 風のどんな青さまで嗅ぎ分けた

嗅ぎながら嗅ぎながら

ちょうど正面を見つめたとたん

いったい何に驚いたのか

地球もいっしゅんその自転を止める

ああその刹那 見つめあった瞳と瞳は

かつてこの時 何におどろいたのか

ぴょんと跳ねると

視界のどこを捜しても

もう君はいない

             imuruta

ぼくの名は 不思議人 < imuruta > ここに紹介しているのは、ぼくの 第3詩集にあたるものです。 つぎに紹介するはずの第4詩集<月下の道>とペアを組んで、ひとつの夢の世界を構成しています。集中、ぼくのお気に入りは<ユン>です。彼女はぼくの夢の中を文字通り難なくすり抜けて、おそらく次の<月下の道>にも登場してくれることでしょう。

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