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藪の中
俺は虎だった 竜を喰う夢を見ていた
俺は力だった その咆哮だった 闇だった
目醒めたとき竹藪にはただならぬ気配が漂っていた
風はそよとも動かず 喰い残しの鱗があちこちに散らばっていた
俺は あるもの語りを憶い出そうとしていた
ひとりの人間が竜になるもの語り
それはある日のこと たまらなく喉が渇き水辺に降りていった
そしてそれは避けようの無い ある過失だった
俺たちは幼少を同じくし 共に藪のぬしとして育った
共に火の国を見たし 水際をどこまでも走った
ともに闇を愛し こよなく地上で暮らしていた
ただ やつには何か夢のものが捕りついていた
それがそそのかし やつを一頭の竜に変えた
その時俺はやめろと言ったのだ もうおのれを喰うのは
夢にそそのかされて暴れまわるのはやめろと
そのとき 俺はすなわち虎に変じていた
*
俺は竜だった いつか虎を喰う夢をみていた
俺は夢だった 詩を書く力だった 全く無名の無垢だった
何が俺を目醒めさせたのか 俺の力を
目醒めたとき 竹藪にはただならぬ気配が漂っていた
俺は あるもの語りを憶いだそうとしていた
一人の人間が詩人になるもの語り
たまらなく心が餓えていた たまらなく夢に餓えていた
それは避けようのない ふかい業だった
俺たちは幼少を同じくし 共に藪のぬしとして育った
共に水の国を見たし 火の淵をどこまでも走った
ともに光を愛し こよなく天上で遊んだ
ただ俺には何か確かに詩のものが捕りついていた
それがそそのかし 俺を一頭の竜に変えた
やつはその時やめろと言ったのだ もうおのれを喰うのは
そのときやつは すでに虎に変じていた
imuruta
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