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​遠き島

名も知らぬ遠き島より

流れ来たる椰子の実ひとつ

ふるさとの岸辺をはなれて幾千里

波に揺られ 波に寄せられ

今ここに そのうぶ声をあげる

塞き上げる声はもとより耳にとどき

呼ばるるがままに振り返れば

みどりごのようなはだかの君ひとり

想いやる八重の汐々

汝はそも波に幾月

名も知らぬ遠き島宇宙より

流れ来たる椰子の子ひとり

ふるさとの星をはなれて幾光年

光に揺られ 光に寄せられ

今ここに そのうぶ声をあげる

こよなくも待ちにし日ぞ今日

空はそこぬけに青く 波うちぎわさわぎ

ひとり白き綿に君を包めば

せききってあふるる涙 長かりし流離の日々

汝はそも波に幾歳月

名も知らぬ遠き島より

還り来たる君ひとり

もとの樹は今や如何に繁れる もとの星は

ああ ながくあずかりし両のわだつみ

いまこそ返さむ 汝が胸に

            imuruta

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