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春のリボン

アネモネ 鈴蘭 クロッカス

ヴィオラ ナルシス スノードロップ

わたしは春を売っています

わたしは鈴蘭を売っています

わたしは裏通りの花売りむすめ

道行く人に 花のなまえを売っています

イリス リラ ムスカリ

プリムラ ジャスミン フリージア

わたしは春を売っています

籠の中には 花のなまえを書いた小さなリボンが

わたしはわたしが呼びかけたとき

振り向いてくれたひとの耳に このリボンを結んであげます

イキシア イベリス マーガレット

スウィトピ アルペンロゼ エーデルワイス

花が売れ残るとかわいそうなので

わたしはぶあつい辞書に挟んで押し花にします

数ヶ月もすると それはほのかな色の栞に

人想い初めしころの ため息に変わっています

雪華 アステリスク 雪割草

コクリコ ハナニラ リューココリーネ

わたしは今日も 白いシフォンの頭巾をかぶると

いつもどおり膝小僧を出して 春を売りに出かけます

すると呼びかけもしないのに あなたが振り返ったのです

そして正確に 「マリアがきみを心配している」と言ったのです

                 imuruta

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これはぼくの第五詩集<イザーイ>です

 

​詩とは何か 詩とは、敢えて言えば思考の不可能性に対する 果敢な挑戦である 詩は、その第一行目からとある文脈を提示する そして、二行目以降はその展開でありながら、つねにすでに間断なく

思考に挑戦しつづける 状況把握が必要なのか あえて書かなかったことを推理する力が必要なのか、それとも、ただ直観を信じてひたすら読み進む力が必要なのかは、あなた次第だ 何にしても、ここにひとつの求心力を提示したかった 詩は、つねに日常言語を模倣するが、かならずや もって非なる世界を提示する

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