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​血の道

窓に蛍のくる夜は 猫みたいに

尾を振りながらあなたを待ちたい

虫の音のかまびすしい夜は 猫みたいに

頭をさかさまにして夢みていたい

暖炉の燃えさかる夜は 猫みたいに

あおむけに寝てなされるがままになっていたい

涙の止まらない夜は 猫みたいに

じっとがまんして 闇をにらみつけていたい

こんなよるは蜜も濃く

唾液もながく糸をひいて離れる

ああ 猫のように自分のことはじぶんでしたい

でも どうにもひと恋しい夜もあって

ぴんと立てた尾のさきを昇ってゆく血の道

何か堅いものを引っ掻きたい

なにか柔らかいものを捜してもて遊びたい

それから ゆっくりと夜の息の音を止めたい

ああ 猫みたいにねじ曲げられたい

猫みたいに目隠しされたい

猫みたいにあかい首輪を付けられたい

そして 猫みたいに耳のつけねを噛まれたい

じゃけんにされたい 鈴のように弄ばれたい

それから 声を包んでいる布を剥ぎ取られたい

それから どうか本心を聞かれたい

骨のすみずみにまで沁みる 猫の声で

                   imuruta

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これはぼくの第五詩集<イザーイ>です

 

​詩とは何か 詩とは、敢えて言えば思考の不可能性に対する 果敢な挑戦である 詩は、その第一行目からとある文脈を提示する そして、二行目以降はその展開でありながら、つねにすでに間断なく

思考に挑戦しつづける 状況把握が必要なのか あえて書かなかったことを推理する力が必要なのか、それとも、ただ直観を信じてひたすら読み進む力が必要なのかは、あなた次第だ 何にしても、ここにひとつの求心力を提示したかった 詩は、つねに日常言語を模倣するが、かならずや もって非なる世界を提示する

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