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​レッスル

マッスル マッスルする世界

タロス レスボス イドラ

髪をひっつめに縛り

体にぴたっと貼りつく競技用のトランクスを穿けば

たしかにそれは水着に似ているが

地上は レッスル レッスルする世界

ウィッスル ウィッスルが鳴り響けば

デロス ドーロス ミコノス

終わりのない試合開始だ

ところで マットの上は

ストア派の独壇場にみえて

どこかエピキュリアンの園にも見える

荒い息 波打つ脇腹 苦悩に耐える筋肉は

裏返せば 欲しい息 欲しい腰

快楽に打ち震えるインナーマッスルにも思えてくる

額を押し付けあい 腰を落として

両の手をにぎり合わせれば

吸う息 吐く息まで隠しようがなく

右に揺さぶって 投げか

左に揺さぶって タックルか

こらえにこらえて 相手の息の穴を探る

要は筋肉のもんだいに見えて じつは官能のもんだいだ

ローリング タックル返し アンクルフォールド

横崩しから 松葉崩しへ 

トルコ刈りから また裂きへ

入れ替わり立ち代わり 優勢を勝ち取ろうとするに見えて

じつは 快楽をむさぼり合っている

きみの好みが アール・デコでも

どうか今日は 古来からのグレコ・ローマンスタイルで

力づくで 欲望と快楽のかんけいについて考えよう

禁欲と善のかんけいについて配慮しよう

おお 健全なたましいは 健全なにくたいに宿る

マッスルマッスル レッスルレッスル 

きみが丸太投げで鍛えてきたというなら 

ぼくは 大樽ころがしで鍛錬してきた

学問は難解にみえて じつは筋肉のバランスのもんだいなのだ

ビバ・ビバマッスル ビバ・ビバレッスル

ビバ・スポーツアカデミーで力の限り哲学しよう

               imuruta

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これはぼくの第五詩集<イザーイ>です

 

​詩とは何か 詩とは、敢えて言えば思考の不可能性に対する 果敢な挑戦である 詩は、その第一行目からとある文脈を提示する そして、二行目以降はその展開でありながら、つねにすでに間断なく

思考に挑戦しつづける 状況把握が必要なのか あえて書かなかったことを推理する力が必要なのか、それとも、ただ直観を信じてひたすら読み進む力が必要なのかは、あなた次第だ 何にしても、ここにひとつの求心力を提示したかった 詩は、つねに日常言語を模倣するが、かならずや もって非なる世界を提示する

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