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レオナルド
レオナルド わたしが微笑んだのはあなたにだけ
あなたが思索に暮れる散歩のとちゅう
ふと水を求めてわたくしどもの 扉を叩かれてもう幾年
あの頃あなたは 空気力学と翼の研究をしておられました
とつぜん空を飛ぶんだとおっしゃった時 皆どれほど驚いたことでしょう
たとえ皆のものが信じていなくとも わたしだけは
いまでも あなたが飛ぶものと思っています
あの飛翔の失敗から あなたは無口になられ
今は 水と終末の研究に没頭されているようです
水はほんとうにまた全世界を 呑み込んでしまうものなのでしょうか
終末とは神の怒りではなく やはり動力学の一種なのでしょうか
それとも夕暮れの一杯の水が なにか禍いしたのでしょうか
ああ わたしの考えまでレオナルディングしはじめて
ただわたしに返せたのは 後世になって謎と呼ばれる微笑みだけでした
imuruta


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