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​ルチア

音楽の都ウィーンは 指折り数えるヨーロッパの都市で

夜ともなれば店々の明かりまぶしく

明日は買ってねと飾り窓のなかで羽根帽子も澄ましてるが

戦時下には強制収容所もあり アイヒマンもいた

 

 ♪ わたしが愛するのは 生きるため

   そうでなければ 楽しむためよ

   たまには本気で愛することもあるわ

   きっといいことがありそうな気がして

あなたが言うに言えぬ過去をもつ身なら

あたしは髪にほそいリボン結んだ痩せたおんなだが

石畳の舗道に辻音楽師たちが煙草をもみ消せば

はるか過去からコツコツと皮底の靴音ひびかせて

得体の知れない 何かが道をやってくる

 

 ♪ 何が欲しいと聞かれれば

   分からないと答えるだけ

   いい時もあれば 悪い時もあるから

触れないでどうか からだの線には

口づけないでどうか じぶんの掌になど

言いようのない長い戦時下を暮し

身ぐるみ剥がされれば 人間はだれも

貧しい祈りにすがるよりない この通りのすがただが

マクシミリアン あなただけどこか違った 

 

 ♪ 何が欲しいと聞かれたら

   小さな幸せとでも言っておくわ

   だって もし幸せすぎたら

   悲しい昔が恋しくなってしまうから

黒い燕尾服を脱ぎ 白いチョッキを脱ぎ

ナチスの帽子をかぶって 

将校たちのくつろぐカフェで歌えば

この通り サスペンダーひとつの貧しいからだでも

歌が終わるまでのみじかいあいだ

あたしはじぶんの愛に翻弄され続ける ルチア

                 imuruta

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♪ マーク以下のテキストは、映画<愛の嵐>のなかで

ルチアの歌っている歌詞を引用しています。

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これはぼくの第五詩集<イザーイ>です

 

​詩とは何か 詩とは、敢えて言えば思考の不可能性に対する 果敢な挑戦である 詩は、その第一行目からとある文脈を提示する そして、二行目以降はその展開でありながら、つねにすでに間断なく

思考に挑戦しつづける 状況把握が必要なのか あえて書かなかったことを推理する力が必要なのか、それとも、ただ直観を信じてひたすら読み進む力が必要なのかは、あなた次第だ 何にしても、ここにひとつの求心力を提示したかった 詩は、つねに日常言語を模倣するが、かならずや もって非なる世界を提示する

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