top of page
​二尾の魚

秋空ふかく 二尾の魚があらわれ

それはどこかシーラカンスに似たぎこちなさで

けれど 上に下にそこそこ自由に泳ぎまわり

その尾びれの先の青は 少し乱れすこし深まり

たしかに水に似たぶっしつを蹴っていると分かる

 

だが 鰓もないその横顔を見るにつけ

どんな呼吸法をとっているのか不思議だ

二尾は 時々あたりの気配をさぐりながら

そっと 口を寄せ合う素振りを見せるが

またからだを不器用にくねらすとたがいに離れる

近づいてみればどこかに性差はあるのだろうが

ぜんたいの大きさは それほど変わらない

あれは うりふたつの双魚

互いがたがいの像に寄り添うが

同一空間を 二物が占めることは出来ない

やがて片方が 卵子のような溜め息を吐けば

もう片方が 白い星屑のような精子を撒き散らす

空の底では どん生殖作用がはたらいているのか

静かにしずかに青が深みを増しはじめると

やがてこの世界は 譬えようもない夕景に彩られる

                  imuruta

ぼく名は不思議人<imuruta> ここに紹介
しているのは ぼくの第三詩集<愛の新世界>
ペアを組んで ひとつの夢の世界を構成する

<月下の道>です これらの詩は遠い処から来た
それはまるで この地球に降りたつと同時に
記憶喪失に陥ったかのような 遠い夢の破片から
「私を忘れないでいて欲しい」という 何かか細い
星からのメッセージのように ぼくの耳には
聞こえました ぼくは耳の奥で呟き続ける
これらの声をここにしるしました 皆さんの耳には
​どんな風に聞こえるか分かりませんが・・

© 2016 produced by imuruta created with Wix.com

bottom of page