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​もう 行かなくっちゃ

ぼく もう行かなくっちゃ

冷たい空の底で星が呼ぶ

ぼく もう行かなくっちゃ

冷たい水の中で小石が呼ぶ

遥か山頂に 雪を戴いた山なみがぼくを呼ぶ

あれはアンナ・プルナだろうか それともダウラギリ

山頂からは 微かにかすかに子守り唄が聴こえてくる

八千メートルになんなんとする山なみから

桔梗の花の底から 青い青い闇がぼくを呼ぶ

馭者座から来た使いの者が 空いている隣に座れとぼくを呼ぶ

鞭を持ったおおきな帽子の下で

もう いっときも待てないと馭者が睨む

方解石の床の下で 

まるでお弾きのような星屑にみとれていた夜もあった

氷と書かれた暖簾や線香花火も みるみる遠ざかる

あの朝 きみが鼻を付けたとき拡がりはじめた幾つもの輪は

ああ どんなにどんなにきみの頬に降りかかる雪片を払ったか

ああ もっともっと象にお伽噺しをせがんでおけばよかった

あの兎如きに このなみだを見られてなるものか

ああ きみのアラベスク 誰にも知られずペンダントに隠しておいたのに

象よ象 もう譜面を隠しにしまわなくても誰も盗み見ないよ

君のほんとうの声が みどりごをあやすほどやさしかったって誰が知ろう

月の沙漠を行くほどに 細くほそくなるぼくらふたりのシルエットは

ついに神へときみを送り届ける ほんの短いエピソードだったのだろうか

ああ いつかまた会おう いつかまたきみと指ずもう取ろう

負けてまけて きみがみどりごの泣き声あげるまで

負けてまけて ぼくが指きりせがむまで

こうして こうして さよならしよう

                       imuruta

ぼく名は不思議人<imuruta> ここに紹介
しているのは ぼくの第三詩集<愛の新世界>
ペアを組んで ひとつの夢の世界を構成する

<月下の道>です これらの詩は遠い処から来た
それはまるで この地球に降りたつと同時に
記憶喪失に陥ったかのような 遠い夢の破片から
「私を忘れないでいて欲しい」という 何かか細い
星からのメッセージのように ぼくの耳には
聞こえました ぼくは耳の奥で呟き続ける
これらの声をここにしるしました 皆さんの耳には
​どんな風に聞こえるか分かりませんが・・

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