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​山ほととぎすの花

夏が来れば 思い出す

水芭蕉の花 山ほととぎすの花

あれは尾瀬だったろうか それとも五色沼

いずれ 唱歌のような既視の世界

夢みて咲いていた 水のほとり

まだふたり 肩ふれあうのさえこわかった

夏が来れば 思い出す

ゆうすげの花 ミヤマリンドウの花

あれは奥入瀬だったろうか それとも八甲田

葉陰から葉かげへと 身を隠すように

短く みじかく飛んだが

いずれ卯の花 しのび音もれる

夏が来れば 思い出す

水引草の花 山つばめの花

夏には帰ってくるといって 旅に出ていったひとは

もう 何年もなんねんも便りの来ないあの人は

夢みて咲いていた 水のほとり

あの人は あの青い丘を越えるときたしかに振り向いて笑った

明日こそわたしも風になろう 風の道に

明日こそわたしも この花のうろを抜け出そう

草の上を走ろう どこまでも水の上を

走れば走れば 草は数え切れない葉となって

まるで蜘蛛の子を散らすように逃げ惑うだろう

走れば走れば 水のおもては漣となって

わたしの目の前を 四方八方へと散って行くだろう

明日は 誰がわたしの髪を解きにやってくる

明日は もう人を待たず 

わたしが自分で 髪をほどこう

夏が来れば 思い出す

水芭蕉の花 山ほととぎすの花

夏が来るたび わたしも戻ろうこの谷に

いつか いつかその日がめぐるまで

廻れ まわれ風ぐるま こころのこころの風ぐるま

                  imuruta

ぼく名は不思議人<imuruta> ここに紹介
しているのは ぼくの第三詩集<愛の新世界>
ペアを組んで ひとつの夢の世界を構成する

<月下の道>です これらの詩は遠い処から来た
それはまるで この地球に降りたつと同時に
記憶喪失に陥ったかのような 遠い夢の破片から
「私を忘れないでいて欲しい」という 何かか細い
星からのメッセージのように ぼくの耳には
聞こえました ぼくは耳の奥で呟き続ける
これらの声をここにしるしました 皆さんの耳には
​どんな風に聞こえるか分かりませんが・・

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