罌粟畑はるかに 銀色の月が掛かり
中空に てんてんと五雲たなびき
花びらそこここでひんやりした夜風に揺られる
時おり この畑に影が落ちてくるのは
あれは雲ではない 夜渡る鳥の影
もしここで きみに話すべきことがあるとしても
もう身振りのほか 言葉はいらない
むこうで影絵のように静かに話す人々
あれは何か この国の手話なのだろうか
それとも 愛しき人をとむらう祈りの姿なのか
夜更けて ときに黒猫が顔をあげてこちらを見るよりほか
もう気に止めるものもない 時も止まれり
遠く花鳥を埋め 罌粟の花粉風に舞えば
夜風のようにひんやりとふたり 愛の河を渡る
imuruta