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​イムルータ

あまたいる鳥類のなかには バンという鳥もいて

湖沼ちかく棲み 日本にはきまって夏にその姿を見せる

黒い体にくちばし黄色く 太陽を見るとき

その虹彩はいっしゅん ルビーのごとく紅く煌めく

斜め上方から見ると 体型は扁平で足も短い

だがこの鳥 長じては父母に替わって卵も抱くし

やがて わが子のような妹とも巣をともにする

あまたいる爬虫のなかには イムルータなる珍獣もいて

タクラマカン近く棲み 砂を掘ることに掛けては右に出るものがない

たいてい 首から尻尾にかけて分厚い甲羅に被われているが

ひとたび恋情に駆られると その長い尻尾を立てて突進する

 

斜め上方から観察すると その姿アルマジロにも見えるが

情ふかく いったん言葉のリングに上がると

生娘のリボンのなかにも 平気でその鼻を突っ込む

              imuruta

これは ぼくの六番目の詩集です

<水のもの><月のものを>呼び込んでの

ジャパニーズ・バーレスクの世界をご堪能下さい

 

​明日香風 いたづらに吹く いづくにか かくだにも

見れど飽かぬ ま幸くあらば またかへり見む 

旅ゆく君と 知らませば さやく照りこそ

呼子鳥 象の中山 かねて知りせば うらさぶる

​心さまねし ひさかたの 天のしぐれの 流れあふ見れば

うるはしき とををにも 妹が心に ますらをの 

恋ひにてし 匂ふまで ゆめこの花を 風にな散らしそ

かへり見すれば 人の眉引き 月傾きぬ

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