いちめんにもみじ散り敷く池を漕ぎゆく
二羽の鴛鴦の仲睦まじく
雉のそれよりもまだ豪奢な玉虫色の襟あし
どんな遠近法のそれで水面に金色の映える
片えがついと前に出ると いまかたえがすうっと就いて出る
いずれが誘いし夜の舟出か
山水の道下りて こんな風雅に立ち会おうとは
まといつく笛の音は誰がうたう恋のうたか
いましがた すれ違うふりして囁いたひとことは
聞こえたくせにわざと反対に回るきみは
見上げれば緋と金色に時は映ろい
あがくきみを押さえて 口うばいぬ時はいま
おお玉章の如き二羽を抱きて 夜更けぬれば
池畔の木立に掛かりし月影 ますます金色を深くする
imuruta