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​沈丁花

沈丁花の無礼なほどの甘い香り 春の始まり

時は三月 花々はみないまに競いあってほころび出そうと

身づくろいに余念がないが

やがて 花の桜過ぎれば枝々芽ぐみ

散ってこそ 美しきもの花

 

田の水におたまじゃくし育ち 

あめんぼが 喜んで水のおもてを跳ねる五月は

どこここも水ぬるみ そこここに小魚育てば

水路の向こうから 脚を濡らしながら白鷺もやって来るが

ああ 首もとまで漬かってみたい泥の海

 

いつぞや忍冬の蜜を吸い

鬼ぐるみの赤に見とれているうち

やがて 雲の塔の居並ぶ夏

その名に酔い その色に酔い

だれも知らぬ言葉に こっそり酔いしれるうち

 

時は進み 公孫樹の雌花人知れず実をむすぶ

おお 誰が街路樹に公孫樹など選んだ

舗道のあちこちに落ちた銀杏の匂うこと匂うこと

秋ともなればものみな熟れ からだの線も稔る

この苦しいほどの女の無礼さ

いまに歩を進め いまに歩を緩め 

歩に歌を絡めんとするうち どこか公園に迷い込めば

いちめんにクローバーの生い茂る広場の真ん中に

原始の木 蘇鉄ひと群れ聳え

黙々と 誰に譲ることなく冬を夢む

             imuruta

これは ぼくの六番目の詩集です

<水のもの><月のものを>呼び込んでの

ジャパニーズ・バーレスクの世界をご堪能下さい

 

​明日香風 いたづらに吹く いづくにか かくだにも

見れど飽かぬ ま幸くあらば またかへり見む 

旅ゆく君と 知らませば さやく照りこそ

呼子鳥 象の中山 かねて知りせば うらさぶる

​心さまねし ひさかたの 天のしぐれの 流れあふ見れば

うるはしき とををにも 妹が心に ますらをの 

恋ひにてし 匂ふまで ゆめこの花を 風にな散らしそ

かへり見すれば 人の眉引き 月傾きぬ

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