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錦鶏

枝の葉にせつなく雪の降りつもり

樹木の幹さえ見分けがたいこの朝

木の下闇からそれでも顔をもたげるのは京唐子か綴錦か

錦鶏が二羽不安げに見上げし空は

槇か笹か 枝の葉はどの一枚も下を向いて

じっと 雪の重みに耐えている

迷ったのか それとも落ちるべく落ちたのか

短く鳴き交わしては浮上を図るも

ただ溶け落ちる雪の雫だけが

二羽の飛翔を支える具象の速度だとは

ああ どんな図柄もぼくらの羽搏きを

ぼくらの胸の鼓動を描き切れはしまい

いのちの いのちの迅さとは

あらかじめ失いし約束の日々は

前垂れにこんな緋を選んだのは誰か

君は きみはいつまでその身を匿し続けられる

                  imuruta

これは ぼくの六番目の詩集です

<水のもの><月のものを>呼び込んでの

ジャパニーズ・バーレスクの世界をご堪能下さい

 

​明日香風 いたづらに吹く いづくにか かくだにも

見れど飽かぬ ま幸くあらば またかへり見む 

旅ゆく君と 知らませば さやく照りこそ

呼子鳥 象の中山 かねて知りせば うらさぶる

​心さまねし ひさかたの 天のしぐれの 流れあふ見れば

うるはしき とををにも 妹が心に ますらをの 

恋ひにてし 匂ふまで ゆめこの花を 風にな散らしそ

かへり見すれば 人の眉引き 月傾きぬ

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