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​寒月

山あかあかと染めた秋が過ぎれば

すすき立ち枯れ霜身をおこす宵

虫どもの声もすっかりなりを潜め

やがてこの地上は いちめんの雪の原と化そう

朽木よ朽木 おれを呼ぶのはおのが洞吹く風か

ふり仰げば月煌々と無想界にひとつ

地上にゆらめくのはその影ばかり

長き尾の銀に太りしも 瞳錐の如く細りしも

人の千倍の嗅覚を備えしも

この目前の冬を載り切るために天が与えし算段

凍てた石よ 灰色の闇を抱くものら

祈りもなく 望みもないこの雪原を

いっぴきの野鼠の思い出が欲しいばかりに

まだ走らねばならないこの身を嗤え

              imuruta

これは ぼくの六番目の詩集です

<水のもの><月のものを>呼び込んでの

ジャパニーズ・バーレスクの世界をご堪能下さい

 

​明日香風 いたづらに吹く いづくにか かくだにも

見れど飽かぬ ま幸くあらば またかへり見む 

旅ゆく君と 知らませば さやく照りこそ

呼子鳥 象の中山 かねて知りせば うらさぶる

​心さまねし ひさかたの 天のしぐれの 流れあふ見れば

うるはしき とををにも 妹が心に ますらをの 

恋ひにてし 匂ふまで ゆめこの花を 風にな散らしそ

かへり見すれば 人の眉引き 月傾きぬ

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