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​合い間

ピヨッ ピヨッ ピヨッ ピヨッ と大きな声でゆっくり鳴きながら

視界の端から端へと飛び回る 

飛翔速度はかなり速い

雀やムクドリの比ではない

もうふた回りほど大きければ ハヤブサかと思うほどだ

一回いっかいの羽搏きが強いので 羽搏きのあいだに合い間が空く

翼は思いのほか長く 鋭角二等辺三角形か

言ってみれば鎌に近い

背は黒く

腹部に白い羽毛が見える

空中を飛翔しながら虫でも捕食しているのか

何度もなんども頭上を往き来する

ヒヨより大きいが 鳩ほどではない

ヒバリ ヨシキリ カワラヒワ イスカ ウソ ヒレンジャク

命名が完了するまでの数分 

知っている鳥の名前を類推しながら想起の瞬間を待つ

命名はいつも 合い間を待つに見えて

つぎつぎと浮かんでくる鳥の名の 消去の連続でもある

 

だが命名が 

既知の連続からふいに自由になるいっしゅん

アマツバメという名が降って湧いたかの如くあらわれる

亜麻ツバメ 雨ツバメ 天ツバメ

甘ツバメ 尼ツバメ 海女ツバメ

それは どこかきみを思い出す間に似ていた

古い日本の農村地帯

爺やがいて 婆やがいて

家々の屋根は茅葺きで

入り口の引き戸を引くと 

広い土間の右手には 農作のための象が飼われていた

              imuruta

これは ぼくの六番目の詩集です

<水のもの><月のものを>呼び込んでの

ジャパニーズ・バーレスクの世界をご堪能下さい

 

​明日香風 いたづらに吹く いづくにか かくだにも

見れど飽かぬ ま幸くあらば またかへり見む 

旅ゆく君と 知らませば さやく照りこそ

呼子鳥 象の中山 かねて知りせば うらさぶる

​心さまねし ひさかたの 天のしぐれの 流れあふ見れば

うるはしき とををにも 妹が心に ますらをの 

恋ひにてし 匂ふまで ゆめこの花を 風にな散らしそ

かへり見すれば 人の眉引き 月傾きぬ

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