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牡丹
闇にぼおっと咲くねむたげなる牡丹
二十輪はゆうに超えようか
はだけた乳房の如く重きその花
何が苦しくて開く その縁からほころびる
鄙びた簾を巻き上げれば 庭は花また花
かぶりを振って思う人はいずこ
緋白匂う 狩野派山楽のその半双
如何に巧緻な修辞も写実を超えぬか
だが 実とは修辞の綾と煤けた金箔が教える
君ら 夜に酔いし 夜を酔わせし花々
そのうなじを咥えて誰か暗がりの巣へと運ばん
いずれ これ以上開きようもなく開けば
あとは晩春の閨と散るばかり
けだし宵の庭は 風もねむたげなる夢のまた夢
imuruta
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